FF竜騎士の跳躍を考える
書いた人間:石橋(2年J科)


 ファイナルファンタジー(以下FFと略す)シリーズ独自の職業に、 ジャンプ攻撃を得意とする『竜騎士』がある(注1)
(登場作品は3〜5、あと9だったか。 6でもアクセサリ『りゅうきしのくつ』を装備すればジャンプ攻撃は可能である(注2)
ジャンプ攻撃(コマンド名は『ジャンプ』)。戦闘中のグラフィックを見た限りでは、 上空高く跳びあがり、上から体重を乗せて武器を突き立てる攻撃だと思われる。(注3)
そこで「どれくらいの高さまで跳んでいるのか?」或いは「どうやって跳んでいるのか?」 と言った疑問を科学的に解明することを試みよう。「ゲームなんだから別にいいじゃないか」と思うかもしれないが (私も基本的にはそう思っているが)、それではこの文章自体を書くこと自体が無意味なので、 こんな風に違う角度から見て考えてみるのもいいじゃないかと思うことにしておいてほしい。
ここでは、FF4以降で採用されているアクティブタイムバトル(以下ATB)におけるジャンプの滞空時間から、 高度などを推測すると言う方法を用いる。(注4)

(注1)FF以外で『竜騎士』と言えば普通は”竜に乗って戦う騎士”を指す。
(注2)私は8以降のFFをやっていないので9は確認していない。故に9の検証も行わない。
(注3)突き刺した武器を抜くのが大変そうだが、他の攻撃方法は考えられない。
(注4)それ以外にこれより正確に分かる方法があるのならば是非聞きたいものである。


1.検証例1〜FF4の竜騎士カインのジャンプ

 まずはジャンプの動作を見てみよう。
しゃがんでから敵の方に向かって画面外まで跳び上がる。
そして攻撃時は手前(味方パーティ側)を向きながら頭から降下している。(注5)
つまり、上空で方向転換しているということになる。

 ひとまずこれらの情報はその辺に措いておいて、(注6)滞空時間から
『初速度と重力加速度以外の力が働かない場合(注7) の”初速度”及び”最高点の高度”』を求めてみよう。
着地までにかかった時間が分かれば、次の式から初速度を求める事が出来る。
   y = v0 * t + 1/2 * g * t^2 (注8) …(1)
 yは対象の高さ(m)、v0は初速度(m/s)、tは経過時間(s)、gは重力加速度である(m/s^2)。
データを採ったところ、カインの滞空時間は最短で2秒。 間に他のキャラが行動したときは、そのぶん着地までの時間が延びた。

着地時の高度は0、経過時間は2秒、重力加速度は地球と同じ-9.8とする(注9)と、 (1)式より
   0 = v0 * 2 - 1/2 * 9.8 * 2^2
   v0 = 9.8 (m/s)
となる。
後々のためにv0を簡単に求める式
   v0 = 1/2 * g * t …(2)
を導き出しておくことにしよう。
それはさておき、求めたv0により最高点の高度を求める事が出来る。
この条件における最高点到達時の経過時間は1秒(注10)であるから、(1)式より
   y = 9.8 * 1 - 1/2 * 9.8 * 1^2
    = 4.9 (m)
最高点では4.9mの高さまで跳んでいるという結果が出た。 走り高跳びの世界記録を遥かに上回る(注11)跳躍(しかも鎧着用で)。 尤も、ゲームの世界なのでその程度で驚くことはないと思うが。

(注5)攻撃をはずしたら大変なことになりそうだ。
(注6)だったら何も最初に書く必要はないのでは?
(注7)要するに、普通に跳び上がった場合。実際は空気抵抗なども働くが、複雑になるのでここでは無視する。
(注8)念のため書いておくが、"*"は掛け算、"^2"は二乗のことである。
(注9)一旦『地球と同じ』にする。ちなみに鉛直上向きを正としたので、下向きに働く重力加速度は負。
(注10)求め方は省略。速度が0のときに最高点。この条件なら t/2(s) になる。
(注11)調べてみたところ、世界記録は2メートル45。倍跳んでます…


2.カインのジャンプで生じた疑問

 これまでの検証で、大きな二つの疑問が生じた。(注12)それは、『高度』と『滞空時間』である。
まず『高度』。モンスターの中には空を飛ぶものや巨大なものが存在するため、 4.9mでは相手に届かない可能性も考えられる。逆に、ダンジョンでは天井の高さも問題である。
そして『滞空時間』。先に述べた通り、ジャンプの間に行動が入ると着地までの時間はそのぶん遅れる。 ゲームの仕様と言ってしまえばそれまでだが、敢えてそれも解決してこその検証である。

 先に『滞空時間』について考えてみると、これはあっさりと仮説が立った。
鳶のようにターゲットの上で滑空し、隙をついて急降下攻撃を仕掛けるというものだ。
竜騎士は滑空用の翼か、空を飛ぶジェット装置を身につけていると考えれば実現可能である。
これならば『手前(味方パーティ側)を向きながら急降下』も問題ない。

 そして『高度』。まずダンジョン内での天井の高さだが、これに関しては天井に張り付いていれば問題ない。
攻撃時は天井を蹴って勢いをつければ終端速度も問題ないだろう。(注13)
次に相手に届かない可能性のあるモンスター。『ジェット装置装着説』ならばそれで解決してしまうのだが、 それでは面白みに欠ける。ここは敢えて滑空説で推せるところまで推してみるとしよう。
 ここで鍵となるのが『重力加速度:g』だ。先ほどは『g=9.8』だったが、それはあくまで現実の地球の重力加速度。
地球よりも重力加速度の値を大きくすれば、最高点の高度を上げる事が可能である。 そうなるとより強靭なジャンプ力を要するが、すでに常人離れしているのでこれ以上強くしても同じことだろう。
太陽系では木星の重力加速度(g=23)が適任だろう。仮にこれを代入してみよう。勿論着地までの時間は2秒だ。
(2)式を用いて、
   v0 = 1/2 * 23 * 2
     = 23 (m/s)
この結果を(1)式に代入して
   y = 23 * 1 - 1/2 * 23 * 1^2
    = 11.5 (m)
高度11.5m。これなら十分だろう。十分でないなら重力加速度をさらに大きくするだけのこと。

 これで問題は解決…と思ったのも束の間、さらに大きな問題が残っていた…。
FF4は月にも行く(しかもそこで戦う)のである。
例え現実の月とは違えど衛星には違いないので、惑星よりも重力加速度は遥かに小さい。
そうなると当然滞空時間が延びるはずなのだが、月の上でも最短で2秒だった。
つまり、ジャンプ滑空説だと『月の上では相当手を抜いて跳んでいる』ことになってしまう。
 できるなら極力人間の力だけで跳ぶことにしたかったが、これではどうしようもない。
不本意だが『FF4のカインはジェット装置を身につけ、ジャンプ攻撃をしている』と言わざるを得ないだろう。
要は『ジェットで上向きに飛ぶ(→高度を保ちつつ滞空)→ジェットで下向きに加速し、急降下攻撃』ということだ。
しかし、私はまだ人間の可能性を諦めない。 同様に他のFF作品も検証してみることにしよう。(注14)

(注12)他に疑問がある?流してください(ぇ
(注13)さながら忍者のようである。FF4の忍者はそんなことしないが。
(注14)私はあくまで滑空説を支持します。


3.検証例2〜FF5のジャンプアビリティ

 FF5のジャンプ攻撃の動作は画面外まで跳び上がり、敵に対してほぼ垂直に落下する。
落下の際はカインのように頭からではなく、そのままの姿勢(足から)で降下する。(注15)

 さて、先ほどと同様に滞空時間から初速度と最高点の高度を求めることにしよう。
データを採ったところ、竜騎士の滞空時間は最短で4秒。重力加速度は9.8としておく。
(2)式に代入して
   v0 = 1/2 * 9.8 * 4
     = 19.6 (m/s)
これを(1)式に代入
   y = 19.6 * 2 - 1/2 * 9.8 * 2^2
    = 19.6 (m)
最高点の高度は19.6m。重力加速度を9.8で十分な高度である。
次元の狭間の重力が気になるところではあるが、FF5の世界では滑空説で問題ないように思われる。
勿論ジェット装置説で考えても全く問題ない。ひとまず今はどちらであるかは保留としておこう。

 さて、FF5の竜騎士に関しては上のような結果が出た。
ところが、FF5ではアビリティシステムにより、 竜騎士をある程度経験した人はどの職業でもジャンプ攻撃のアビリティをつける事が出来るのである。(注16) そう、例え白魔導師や召喚師、踊り子でさえも。(注17)
当然それに関しても違いがあるかどうか、検証する必要があるだろう。
 取り敢えず、『竜騎士』と『それ以外の職業』で比較検証することにしよう。(注18)
例として白魔導師の滞空時間を測定したところ、やはり最短で4秒であった。
故に、アビリティの『ジャンプ』も竜騎士と同じ方法で跳んでいると言えるだろう。

(注15)頭からの降下は長年竜騎士をやっているが故の業なのだろう。
(注16)尤も、槍以外ではジャンプしても攻撃力が上昇しないため、普通つけない。
(注17)白魔導師などがジャンプ中、上空でどうなっているかを想像してはいけない。
(注18)暇ならば全職業で試したのだが…セーブデータがなかったので。


4.検証例3〜FF6の『りゅうきしのくつ』によるジャンプ

 FF6ではアクセサリによって誰でもジャンプ攻撃が出来るようになる。(注19)
ジャンプ攻撃の動作は、FF5と殆ど同じであった。6は着地時少し屈んでいるが。

 まずはいつものように滞空時間から初速度と最高点の高度を求める。
滞空時間は最短で10秒であった。重力加速度を9.8と置き、(2)式に代入すると
   v0 = 1/2 * 9.8 * 10
     = 49.0 (m/s)
これを(1)式に代入して
   y = 49.0 * 5 - 1/2 * 9.8 * 5^2
    = 122.5 (m)
最高点で122.5m…ちょっと跳びすぎである。途中で上昇を止めて滞空していると考えたほうが良さそうだ。
高度に関しては申し分ないと言える。

 滑空説を主張するには十分な高度があるが、非常に重要な問題がある。
そう。はっきりと書かれているのだ。竜騎士の『靴』と。(注20)
流石に靴を履いただけで滑空が出来るようになるとは考えられない。
そうなるとやはり『りゅうきしのくつ』はジェットブーツのようなもの、と考えるより他ないわけだ。
 つまり、FF6におけるジャンプ攻撃の一連の流れは
『ジェットで適度な高度まで上昇→出力を抑えて高度を保つ→出力を切って自由落下による急降下攻撃』
であると考えられる。滑空説はまたしても敗北してしまった。

 4と6がジェット装置説。そうなると、保留にしていたFF5のジャンプもジェット装置説と考えるのが妥当であろう。
全ての職業で使える汎用性と降下時の体勢から、 FF5もFF6同様ジェットブーツで上昇・滞空し、降下時は重力に身を任せているのではないかと推測する。

(注19)『戦う』コマンドがなくなるので殆ど使われないが。また、セリスなどがジャンプ中、上空が(以下略)
(注20)今は手元にないが、昔見た攻略本にもはっきりと『靴』のイラストが描かれていた気がする。


5.最後に(注21)

 今回の検証では『ジャンプ』はジェット装置を用いて飛んでいるという結論になった。
 個人的には滑空説が一番格好良いと思っていただけに少々残念な結果ではあったが、 思い通りの結果にならないこともまた楽しいのではないだろうか。
 ちなみに、魔法などの『現世に存在しない力』に頼らなかったのは、その力が定義されていない(定義できない)からであり、 また違った視点で見るからこそ、ある程度現実世界に即していなければならないと思っているからである。

 ところで、何故FFでは『竜騎士』=『ジャンプ』なのだろうか?(注22)
私は次のように考えている。 (FF以外の)ファンタジー世界における『竜騎士』が上空から飛竜に乗って奇襲をかけるが如く、 FFの竜騎士は空高く跳び上がり上空から奇襲をかけるからではないか、と。
RPGで『空中戦』を描くのが困難であったからこそ、FFの竜騎士は生まれ、そして個性となったのではないだろうか。

 こんな雑文を最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。(注23)

(注21)FF3はターン制なので検証できないのです。
(注22)そういうことは最初に書くのが普通なのかな?
(注23)雑文である以上、読み飛ばされても私は何も言えません。